アコースティックピアノ聞き比べ

DAW/DTM用のピアノサンプル音源聞き比べページ を作って久しいのですが、
電子ピアノは相変わらず YAMAHA P-120 で、いい加減に本物が欲しいなと。

そこで、よしアコースティックピアノを買おう、と思い立ってからわりと色々なピアノを弾いて回りました。
基本的には全てアップライトで、

  • Boston UP-118E PE/UP-132E PE
  • YAMAHA YUS1/YUS3/YUS5
  • YAMAHA SU7
  • Bechstein Academy A.3
  • C.Bechstein Millenium 116K
  • C.Bechstein Classic 118
  • C.Bechstein 12n(中古)
  • C.Bechstein Concert 8
  • Steinway & Sons Z114(中古)
  • Steinway & Sons K-132(中古)
  • Steinway & Sons V-125

という感じ。
折角なので、それぞれ弾いて感じた事を書いていきたいと思います。

なお、感想はその前に弾いたピアノに引きずられる事が多いので、なるべく弾いた順に書いていきます。
そして全てのピアノについてじっくり弾きこんだわけでは無く、表面的な感想になっている事を予めご了承下さいませ。

 

Boston UP-118E PE/UP-132E PE

やはりスタインウェイの音が好きなので、Steinway & Sons のアップライトを探しましたが、いやちょっと待て
という値段なので、スタインウェイの設計で日本のカワイが作っていると言う Boston を弾いてみました。

スタインウェイを思わせるような、明るい音。ニューヨークスタインウェイの様に前パネルが開閉可能な為、
小さいのにわりと響きます。132 は 118 を同じ音色のまま力強く拡大したような感じでした。
最初に弾いた UP-118E PE が悪くなかったので、最初はこれにしようかとか思っていたのですが。

実は、他の店で弾いた UP-118E PE が最悪で、流石に店頭にこれを置くのは無いんじゃないかというコンディション。
ボストンは個体差が大きいとか、すぐ悪くなるとか言われていたので、買って数年でこうなったらやだなというのと、
最初に悪いほうのボストンを弾いていたら、絶対に選ばなかったなという感じでした。

最初に弾いた UP-118E PE は良かったんですよ。
色々弾いた今でも、もう一度弾いたらそれなりに気に入ると思っています。

 

YAMAHA YUS1/YUS3/YUS5

あまり特筆すべき点は無いヤマハの音でした。ある意味安心すると言うか。キラキラとそつ無く、小ぢんまりと響く感じ。
YUS1 と YUS3 はあまり印象が変わらなかったのですが、YUS5 はさすがに悪くないと思いました。

そういえば、サイレントピアノの音も聞いてみたのですが、どうせ電子ピアノ、と思って試してみると思ったより
いい音に感じました。P-120 みたいだな、とは思いましたけれども。
どうせなら、同じグループのよしみで Bösendorfer の音をサンプリングして選択できたりしたらいいのに。

ヤマハの良さは、完全にコントロールされた品質と、その耐久性にあると教わりました。
とにかく固体ごとのばらつきが少なく、多湿の日本で手入れせず放っておいてもそこまで悪くならない。
たとえ悪くなったとしても修理がしやすく、中古の品質も安定している。

シンセも電子ピアノもヤマハでしたし、ヤマハのピアノの音も嫌いじゃないので、ヤマハでも良いかなと思ったのですが、
せっかくなので他のピアノも試してみよう、というところから、ピアノの迷宮に迷い込んだのでした。

 

YAMAHA SU7

ただし、ヤマハのアップライトでも、これは別格でした。弾いてびっくりしました。
さすがヤマハアップライトのフラッグシップというだけの事はあり、
何と言うか、ヤマハの音をそのままいい音にしたような感じ(笑)
グランドピアノみたいな音です。朗々と響く。凄い。

YUS5 が 2台買える値段ですが、これは良いなと思いました。

 

Bechstein Academy A.3

三大ピアノのうちの一つ、ベヒシュタインの廉価ライン、ベヒシュタインアカデミー A3 です。
ベヒシュタインは落ち着いた音、というイメージがあったのですが、これは思ったよりも明るい音で、
元気良く響く感じ。悪くないです。

ただ、ベヒシュタインの音か?と言うとちょっと違うかもしれない。

 

C.Bechstein Millenium 116K

ベヒシュタインのロゴに C. が付く、コンサートシリーズと言われるものの中では一番小さいモデル。
キャスターが無く、直線的な形状で、現代的なデザインのピアノです。これはこれでかっこいい。
蓋を閉じるとピアノっぽく無いです(笑)

肝心の音ですが、小さいのに音はとても良く響く。弦というよりはピアノそのものが鳴っている感じ。
ぎゅっと凝縮されていてかつ澄んだ音。これも明るい音。良いです。

 

C.Bechstein Classic 118

中身は Millenium 116K と同じらしいのですが、音は違うと感じました。
Millenium 116K に比べると少し落ち着いた音。
後述の Concert 8 の雰囲気(おそらくこれがベヒシュタインの音?)が感じられる気がしました。

ただ、いくら Classic とは言っても簡素すぎないですかねこのデザイン。
見た目からは想像できないような値段なのですが。
そしてその見た目からは想像できないようないい音が溢れ出てくるんですけれども。

 

C.Bechstein Concert 8

ベヒシュタインアップライトの最高峰です。フジ子・ヘミングさんのお気に入りだとか。
グランドピアノを思わせるような、凄い迫力の音です。とてもとても響く。

形容しづらいのですが、記憶に残る音。派手では無いけれども、色彩に富んだような音。
タッチの強弱で音の表情がとても変わります。
ベヒシュタインのピアノは音の立ち上がりが良いと良く言われるのですが、確かにその通りでした。
打鍵した瞬間に音がパーンと響く。反応が凄く良い。

実は、最初に触ったときは何だこれ弾きにくいなと思ったピアノでした。
低音がどろどろとして、中高音域もハッキリしない。今思うと適当に触っていたからなのですが、
そんな筈は無いと思って、何度か真面目に向かい合ってみると、少しずつピアノが応えてくれ、
その度にピアノの表情が変わる。とても奥ゆかしいピアノだなと思った次第です。

 

C.Bechstein 12n(中古)

何かと評価の高い 12n です。二つの中古を弾いたのですが、全く印象が違って驚きました。

最初に弾いた中古(1970年代)は、あまり特徴が無く、年を取った丸い音。あまり惹かれませんでした。
12n ってこんなものなのかなぁと思ったのですが、別の所で弾いた 12n は全然違いました。

同じく 1970年代のものだったのですが、弾いてみると若々しく、Concert 8 の面影を感じ、
まさにベヒシュタインのピアノでした。

中古品はやはり、ものによって大きく音が違うんだなと思った次第です。

 

Steinway & Sons Z114(中古)

「スタインウェイ」という名前でアップライトピアノを探すと、Z114 の中古が良く出てきます。
実際に弾いてみた所、スタインウェイのような音はするけれども、ピアノとしてどうかと言われると
微妙というものが多かったように感じます。状態の良い中古があれば良いのかもしれませんが、Z114 ともなると
50年~60年前のものも多く、なかなか良いものは少なそうです。
レトロな音が好きならありかもしれません。

 

Steinway & Sons K-132(中古)

わりと新しめ(1980年代後半)の K-132 があったので、期待して弾いてみたらあまり良くありませんでした。
音がぼやけていて、まとまりが無い。聞いてみると部品を交換していて、オリジナルパーツでは無いとの事。

反対に、とても古い(1920年代)K を弾いた時は、さすがに古さは感じたものの、
90歳とは思えないような響きに驚いた事があります。

中古品は経年よりも、どう使われてきたかの方が重要ですね。
良い環境で大事に使われてきたものは 100年持つ楽器だという事を実感しました。

 

Steinway & Sons V-125

上記 K-132 を弾いた後、期待していた分がっかりしたので、新品のスタインウェイを弾いてみる事にしました。

V-125 ですが、いやさすが。しっかりとスタインウェイの音がするピアノでした。高いですけど。
明るく響きわたる。低~中音の分離が非常に良く、キラキラと透明感がある。
そういえば、ピアノCD やコンサートホールではスタインウェイピアノが多いので、
ヤマハとは違った意味で聞きなれた音だなと感じました。

 

最後に

Bösendorfer 唯一のアップライト、130CL も弾いてみたかったのですが、回った所にはありませんでした。
中野のショールームにはあるようですが、私の腕でのこのこ行って弾いてみる気にはなれず、、

そして今更ですが、弾き比べ、というよりは、聞き比べに近いのでタッチについては何も書いていません。
まーそもそも私はそんなに弾けないですし。

という事で、わずかでも、アップライトピアノを検討中の方の参考になれば幸いです。

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