人生を変えるピアノ(後編)


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ピアノ探しの旅を書いた前編はこちら
後編はベヒシュタインのベタ褒め記事です。

100年の幸福

Concert 8 を買ってしまった時に、思わず 2ch のベヒシュタインスレに書き込んでしまったのが以下。

http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/piano/1124597469/842-844

842 :ギコ踏んじゃった:2012/07/08(日) 19:16:01.52 ID:t87nrsYn
   Concert8買ったったー
   これであと100年は幸せに過ごせる

843 :ギコ踏んじゃった:2012/07/08(日) 19:43:31.96 ID:+GhtuesU
   >>842
   おめ
   ウチも購入して人生かわったよ

844 :ギコ踏んじゃった:2012/07/08(日) 19:49:36.10 ID:VNsQ5277
   >>842
   おめ!
   長生きしろよw

元々、この記事は「恋に落ちるピアノ」という題名にするつもりだったのですが、843 の「人生かわった」という
レスにぐっと来たので「人生を変えるピアノ」という題名にしたのでした。

C.Bechstein Concert 8

Concert 8 は、改めて自宅で弾いてみても、とにかくシビアなピアノでした。
そのシビアさは、上手く弾けば無限の表現力になり、下手に弾けば曲が不揃いになる。
和音一つとってみても、どれかの指の力の入れ具合で、全く違う音になる事に驚きました。

そして特筆すべきはやはり、その音の分離と、豊かな音色かと思います。
総アグラフのおかげか、響板の良さか、音を出すたびに元の音は消えず積み重なって行くようで、決して音が濁りません。
透明感を持ちながらもハッキリとした音は、ミスタッチを絶対に埋もれさせず、正確に指摘して来る
(本当に、間違ったらすぐ分かるのですこのピアノ)のですが、あくまでも優しく指導するように、
とても精緻でありながら、責め立てるような音にはならない事に感心しました。

打鍵の強弱は音色のバリエーションを生み、目を閉じると音が色彩となって聞こえて来ます。
ベヒシュタインの音色は、スタインウェイの音色に比べると、地味に聞こえるかもしれません。
ただ、例えば、高音部を思い切り打鍵した時に、ベヒシュタインは耳の痛い音になりません。
なので、弾いていて聞き疲れしない、というのも細かいですがオススメなポイントです。

音量では無く、音色の美しさ。
派手さでは無く、色彩の豊かさ。
優しく、強く、歌い上げるようなカラフルな音色は、ベヒシュタインにしか出せないように感じます。

また、ベヒシュタインは打鍵時の反応が良く、(例えは変ですが)まるで電子ピアノのようで、確実に俊敏にタッチに追従します。
その分、正確なコントロールが求められるのは言わずもがなですが、打鍵の瞬間に音が響くのはやはり気持ち良いですね。

そして、これは個体差と調律による部分もあるかと思いますが、楽器としての統一感が一線を画していると感じました。
音の強弱、音の高低、打鍵のフィーリング、音色の全てに乱れが無く、完璧に統一されていて、全く隙が無いのです。

Concert 8 が家に来てからこの夏で 2年が経ちますが、買う前に感じた奥ゆかしさはその時のままで、
今でも弾く度に新しい発見があります。

ベヒシュタイン・アップライト

ヤマハのピアノの原型となったベヒシュタインですが、まだまだ国内の知名度は低く、その良さが知られていないように感じます。
スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインの世界三大ピアノと呼ばれるメーカーのうち、
スタインウェイは説明の必要が無く、ベーゼンドルファーはヤマハになり、ベヒシュタインはあまり接点が無いかもしれません。

折角、ベヒシュタインのオーナーになったので、もっとベヒシュタインの良さを伝える事ができればという思いから、
この前後編を書く事に決めた次第ですが、基本的にベタ褒めするくらいしかできる事がありませんね。

ベヒシュタインの音は、録音で聞くとあまりぱっとしない事もあるのですが、実際に弾いてみると、
音の出かたが違うというか、例えばスタインウェイグランドが天板に反射して遠く右上に飛んで行くような感覚であるのに対し、
ベヒシュタイングランドはまず演奏者を音で包み、それから遠くへ広がっていくような感じでした。
その感覚がなかなか録音では味わえない部分で、触れた瞬間に訪れる感動は、そういう所から来るのかもしれません。

ベヒシュタインは本気のアップライトを作る会社で、「C.Bechstein」という「Bechstein」に「C.」の付くシリーズ
(ちょっと前だとゴールドラインとかコンサートシリーズとか呼ばれていたもので、現在だとマイスターピースシリーズ)
は、アップライトに対する先入観や、常識を覆すピアノです。

その下の「C.」が付か無いプレミアムシリーズ(ちょっと前のアカデミーシリーズ)は、悪くないピアノという印象
であるのに対し、「C.」付きのものは全く違った響きになっています。

C.Bechstein のアップライトは、
・Millenium 116K
・Classic 118
・Classic 124
・Concert 8
があり、本国だとこれに加えて「Contur 118」と「Elegance 124」があるようです。うーん違いが分からん。デザインだけかな。

ぜひ弾いてほしいのは Millenium 116K で、普通だと背の低いピアノはスケールの小さな音しか出ず、
低音も怪しい感じになるのですが、これは全くそんな事がありません。
元気良く、クリアーに、正確に歌うピアノなのです。特に音色が豊富で、色んな音が出ます。
ヤマハやカワイのアップライトと同じ心持ちでベヒシュタインのアップライトを弾くと、びっくりすると思います。

敢えてアップライトという選択

「ピアノはグランドピアノが基本で、アップライトは亜流。」
「グランドピアノで無いとタッチが。」
「アップライトはグランドピアノを買えない人が買うもの。」
などなど、色々言われますが、是非一度、ベヒシュタインのアップライトを弾いてみて下さい。
もし趣味でピアノを弾いていて、YAMAHA C3 あたりを狙っているのなら、確実にベヒシュタインのアップライトの方がいい音です。

確かに、アクションの構造上、グランドピアノの方が連打に有利ですが、それが問題になる程の腕であれば、
そもそもアップライトとグランドピアノで迷う事は無く、グランドを買うしかありません。

ただ無条件にグランドピアノの方が音が良い、と思っているのであれば、それは間違いです。
自宅に置くのであれば、国産の小型グランドを置くよりも、ベヒシュタインのアップライトを置く方が
良い音でピアノを楽しむ事ができます。

まあ、グランドよりもアップライト、というのは趣味に限った話とも言えますけれど。
どうせならいい音でピアノを楽しみたいじゃないですか。

趣味としてのピアノ

趣味にどれだけお金をかけるかは人によりますが、車を趣味にするよりは確実に安上がりかと思います。
Concert 8 はさすがにやらかした感があったものの、車一台買ったと思えばいいや、と思うと一気にお得に感じられますね。

  ピアノ
同価格帯の製品 C.Bechstein Concert 8 BMW 3シリーズ セダン(E90 325i)
維持費 年1~2回の調律、
必要に応じて家財保険
月々の駐車場代、ガソリン代、税金、
保険料、車検
燃費 約100kcal/h 12.6km/L
ベヒシュタイン クリスタルクリアトーン 直6自然吸気エンジン シルキーシックスサウンド
移動 キャスター付きだが困難 定員 5名まで可
ドライブフィール コントロールがシビアで奏者の実力が
求められるものの限界値は高い
スポーティな加速感と、
安定したコーナーリングフィール
製品寿命 100年 10年~20年

はい。すみません冗談です。

ピアノを 100年持たせようと思ったら、おそらく途中でオーバーホールが必要では無いかと思います。
一度、1900年頃のベヒシュタイングランドを弾いたことがあるのですが、100年経っても素晴らしい響きでした。

Concert 8 を始めて部屋に置いた時、部屋が木の匂いに包まれた事を覚えています。
その時、ピアノは木工芸品なのだと再認識しました。
桐箪笥のように、この木が朽ちない限り、ずっとその寿命を保ち続けて欲しいものです。

おそらく、このピアノは私よりも長生きするでしょう。
少しでも長く弾いていられるように、健康でいようと思ったのでした。

その昔、とある面接で、何故か自分の夢を聞かれた事がありました。
ちょっと悩んで、こう答えました。

「グランドピアノを自宅に置く事です。」

買うだけなら何も難しく無いのですが、それに見合った場所が必要で、そっちの方がハードルが高いですね。

とは言え、何の因果か最高峰のアップライトを手にしてしまったので、夢の半分は叶ったと言ってしまっても
良いんじゃないかと思いますが、次のハードルがさらに高いものになってしまいました。
普通のグランドだと全く太刀打ちできません。

スタインウェイか、ベーゼンドルファーか、結局またベヒシュタインか。
あと数十年後の楽しみとして取っておきます。

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